人類の幸福とは何かを深く問いかける本
先日、ウルグアイの元大統領ホセ・ムヒカ氏が逝去されました。
「世界でいちばん貧しい大統領」として知られた彼の名を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
2012年、リオデジャネイロで開かれた、環境問題を中心とした国際会議において、彼は他国の首脳たちとは異なる出で立ちで登壇しました。
ネクタイも締めず、普段着の背広姿でにこやかに語りながらも、そのスピーチは人類の幸福を根底から問い直す、心を揺さぶるものでした。
ムヒカ氏は、大統領在任中の報酬の約9割を福祉に寄付し、公邸ではなく町から離れた農園で花や野菜を育てながら質素に暮らしていました。移動には中古の愛車を自ら運転するというスタイルも貫いていました。
有名なエピソードとして、ヒッチハイクをしていた青年が偶然乗せてもらった車の運転手が、なんとムヒカ夫妻だったという話があります。飾らず自然体である彼の生き方を象徴する出来事です。
彼のスピーチ内容を収録した書籍を、私は2016年、日本で彼の講演の様子をテレビで見た際、衝撃を受けて手に取りました。
本書には、次のような言葉が記されています
- 「貧乏とは、少ししか持っていないことではなく、限りなく多くを必要とし、もっともっとと欲しがることである」
- 「私たちが挑まねばならない壁はとてつもなく巨大です。目の前にある危機は地球環境の危機ではなく、私たち自身の生き方の危機です。人間は、自らの生活のために作り出した仕組みを、もはやうまく扱えず、むしろその仕組みによって危機に陥っているのです」
- 「私たちは発展するために生まれてきたのではありません。この惑星で幸せになるために生まれてきたのです」
これだけではありませんが、このように、本書は私たちの「生き方そのもの」を根本から問い直すよう警鐘を鳴らしています。
同じく、私が敬愛する人類学者・奥野克己先生の著書
『ありがとうもごめんなさいもいらない 森の民と暮らした人類学者が考えたこと』にも、同様の問いが描かれています。
この本のことも、近いうちにまとめますね。本当に良い本なので、ぜひ読んでいただきたいです。
奥野先生は、ボルネオ島のプナン村で狩猟採集民と共に暮らし、20年以上にわたり毎年フィールドワークを続けておられます。
プナン村には「ビッグマン」と呼ばれる「何も持たない」存在がいます。
狩りで得た獲物はみんなで分け合い、所有という概念がなく、シェアリングエコノミーがごく自然なかたちで根付いている社会です。
そこでは、「何も持たない者こそが最強」とされ、「欲を捨てよ」という教えが生きています。
ムヒカ氏の思想とプナンの人々の暮らしは、根底で通じ合っています。
プナンの人々は、まさにそれを日常の中で体現している“実践者”だと感じます。
この2冊から伝わってくるのは、「資本主義そのものが悪いわけではない」ということ。
問題は、それを制御できずに暴走させてしまう、私たちの“生き方”にあるのだと気づかされます。
資本主義、自己実現、目的達成や成功そのものを否定するつもりはありません。
ただ、その背景にある「なぜ自分はそれを求めているのか?」を見つめる力が、今、何よりも大切なのだと思うのです。
それは、もしかすると過剰な承認欲求や、愛の欠如からくる強迫観念かもしれません。
だからこそ、私たちは今一度、自分の生き方や在り方を根本から見直し、地球というこの星で、他のすべての存在と共に幸せに生きる道を模索していく必要が急務ではないかと感じています。
心よりご冥福をお祈りしますと同時に、私たちが生涯にわたって向き合う課題を教えてくださったこと、心より感謝いたします。

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